解散日記22

 

9月27日

 廃棄物を満載した5トントラックが、ゆっくりと花川戸の角を曲がって消えた。ほんとうにゴミのようなものをたくさんもち続けていたんだなと思う。無駄に見えるようなものの集積が編集というものだったのかも知れない。

ペヨトル工房の残っていたフロワも完全に空になり、ここで十年近く作業をしたことが、走馬灯のように甦るかと思ったら、意外にも感傷は湧かなかった。余りにも何もない部屋がかえって気持ちをすっきりさせたのかもしれない。ペヨトル工房の20年が終了した。

 浅草、花川戸に来る以前は、渋谷の桜丘に事務所を置いていた。バブルの最盛期の頃だったろうか突然、近所が一気に地上げにあって、強気になった大家が遠回しに値上げか解約かを迫ってきて、やむなく浅草に移った。やむなくといっても、もともと学生の頃から好きだった町なので、すっかり溶け込んであっという間に、この十年がたった。

 レバ丼の「あづま」、オムライスの「ヨシカミ」、ロシア?料理の「ストロバヤ」、ホットドッグの「ジロー」、江戸前の「金寿司」と、話をしながら食事ができる場所もできたし、何よりちょっと変わった格好をしていようと、受け入れて、親しくしてくれるのがいい。ペヨトル工房は終了したけれど、ボクにとっての浅草は終わっていない。浅草に来てからの、話を思い出して書こうとしたんだけど、今日は駄目みたい。結構なにも思い出せない。

さあて、明日からどうしようかな。



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