解散日記31
11月12日
新聞見たよ。よかったじゃない。
H.Rカオスの「ドリー」の後の休憩で、世田谷パブリックシアターのロビーに降りてくると、知り合いの人に次々そう言われて、ちょっと照れ臭い気分になる。よかったじゃないと言われてもなぁ……。西堂さんがニコニコ笑いながら近寄ってきた。西堂さんは、二十五年前、「夜想」を創刊したころに、やはり『共創空間』という演劇の雑誌を立ち上げてその後、未来社の経営を継いだ。いまは未来社からは離れているらしい。演劇人でありながら出版業にも携わった人なので、現状について細かい説明なしに話しが進む。
かいつまんで在庫がどのように救われているかの話しをすると、三月書房みたいな書店が全国に20軒もあればそれで良いんじゃないの?と言われて、ちょっと目から鱗状態だった。そうか、いや20軒なくても、12軒でもいけるかもしれない。1月書房から12月書房まで。各店舗、月に8万くらい在庫を売っていただければ、やっていける。ふーむ。取次はいらなくなるかもな。
でも実際には、ボクは西堂さんの肩を叩いて、全国に20軒どころか5軒もないですよ。は、はっ、はと笑い飛ばしてしまった。それが現状だから。そうだよね、と、西堂さんも苦笑いしていた。
しかし取次がなくてもやっていけるという可能性はゼロじゃないような気がする。チェーン店に一括仕入れをしてもらい、ユニークな書店10軒と契約すれば、どうにかやっていけるのではないだろうか。後は、HPで売る。あるいはHP売りをしている書店に協力していただく。
どんどんアイディアが湧いてくる。同じ掛け率で古書店にも卸す。で、書店も古書店も自由価格にする。取次を通らなければ再販制度にしばられることもない。掛け率を押さえて買い切ってもらうのも手だ。追加はせずにあとはHPとか。生き延び方は考えればいろいろあるかもしれない。
「砂漠の内蔵」がはじまるよ。ぼーっとしているボクに、西堂さんは声をかけてたたたっと階段を軽快に駆け上がっていった。
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