解散日記33

 

 11月21日

 
「ガランス」の三反崎さんが、電話をかけてきた。朝日新聞でペヨトルの解散を知ったらしい。ケーキ持っていくわと言っている。「ガランス」は浅草にある美味しいケーキ屋さん。だから浅草の仲間。最近、御無沙汰しているけれど、一時期、わざわざ通っていた。ペヨトルが浅草に来るずっとずっと以前から浅草にいる。チーズケーキが美味しくて、レシピを習って一生懸命真似をしてケーキを作ったこともあった。合田佐和子の絵がたくさん飾ってあって、ピンクの可愛いお店で、猫好きなところも共通していて、トイレに入ると四谷シモンの妖艶な半裸姿の写真が飾ってあった。青木画廊に通っていたボクとしては、本当にお気に入りの喫茶店だった。金子国義やそのお弟子たちも出入りしていて、サロンとしても楽しいところで、いくとついつい長居をしていた。
 三反崎さんだけじゃなく、最近、外へ出ると「ペヨトル」解散したんだってと良く声をかけられる。これは朝日新聞の影響だと思う。しかし残念ながら、在庫は、ぴくりともしなかった。一軒だけ本屋さんが在庫買いますよといっていただいて30冊を納品した。HPのブックショップの売り上げも変化ない。新聞の情報は、動きにはつながらないのだろうか。劇場関係者は、今でも朝日新聞に載ることをすごく重要なことに思っている。残念ながらボクの母親もボクの言動よりも朝日新聞に載っていることを優先する。ペヨトル工房が朝日新聞に載っていたけど、やっぱりあんたのやっていたことは先見性があったんだねとコメントされた。
 もう一つ感じたのは、朝日新聞の記事によってペヨトル工房の解散を知った人が多いということだ。その人たちに聞いてみると、ネットを使っていない人がほとんどだ。社会との情報コネクションをネットにする人と、新聞やテレビのような旧媒体によって情報を得る人と大きく二つに分かれてているのではないだろうかと思ってしまった。
 もちろん現実は複雑で、幻想文学(これをボクまでジャンルとして書くようになってしまった)を愛読している人が、新聞を読まずにネットを使っているということも多々あるし、現実にそういう人を何人も知っている。幻想文学とネット、この意外そうに見える組み合せがペヨトル工房の最後の動きを支えているような気がする。先入観念はいけない。どんどん変化は起きているし、しかしながら変わらず愛され続けているものもあるのだ。



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